染谷昌克の『経営管理講座』
人材育成の新聞『ヤアーッ』より
「経営管理講座 431」 染谷昌克
三十一年の歴史に幕
平成五年にスタートした「塾アイウィル」は令和六年十月八日に解散した。虫の知らせか、染谷和巳は脳出血で倒れる一週間前に「次回を最終回として塾アイウィルを解散する」と突然宣言をした。最終回、第百三十二回例会は十六名参加で幕を閉じた。
令和六年七月十一日、東京八重洲。塾長の染谷和巳は、塾生を前に塾アイウィルの解散を宣言した。
私には「失神」という持病がある。十二年前、研修所の洗面所で何の前触れもなく倒れた。
気がつけば洗面所の床に仰向けに寝ていた。頭に大きなこぶ。なんだかよくわからなかったが病院には行かなかった。
その半年後、サウナのあとシャワーを浴びているときに失神。こりゃおかしいと思い病院で診察を受けた。診断は「脳虚血性発作」。薬をもらい毎日服薬した。
それでも年に数回発作があった。家族には内緒にしていた。
六年前出張時、ビジネスホテルで失神した。今度はバスルームの縁で頭を打ち、頂頭部が割れた。出血が多かったが病院には行かなかった。年末のことだった。正月に一族が集まり、孫に傷口を発見された。無理やり病院に連れていかれた。診察検査の結果、原因は脳虚血性ではなく、重度の不整脈。二秒半以上脈が止まると、失神する。もともと持っている貧血と低血圧が症状を悪化させる。
その後頻度が増えてきた。現在では二カ月に一度ほど。何の前触れもなく起こる。セミナー中に起これば私も困るが、皆さんも困る。よって次回十月の例会を最終回。解散式とする。
因みに、九月号でお伝えした脳出血の原因は失神である。
塾アイウィルとは
延べ六十名が参加した経営者の勉強会。令和六年度は二十一名の塾生が在籍していた。
年に四回開催。都内の会議スペースで開催。午後一時。塾長の講話から始まる。
毎回二名の塾生が持ち回りで一時間の講演。午後五時には場所を移して懇親会。
毎回二十名弱の参加で三十一年間続いた勉強会である。
参加資格が三つある。
・人材育成について真剣に考えている指導者
・会社では取締役以上の役職者、個人ではその代表者
・月刊「ヤアーッ」定期購読者
発起人の中心人物である亀井民治社長に話を伺った。
なぜ塾アイウィルを設立したのか。亀井社長が教えてくれた。
目的はいろいろありますが、大きな柱はふたつあります。
ひとつは、事業経営において最も大切な「人材育成」をテーマとして、染谷和巳先生と塾生相互の経験に学ぶこと。
もうひとつは、職種、規模、利害を超越した真の経営者の集まりを育てることによって、塾生の事業発展と人間形成を目指すことでした。
三十年続けて私が気づいたことをいくつかお話しします。
①実践的知見と成功事例の共有
染谷先生の豊富な経験と考え方に基づく指導は魅力。
加えて経営者として実際に人材育成に取り組んでいる塾生の、具体的な成功事例や失敗談の共有は大きな学びになりました。
これにより、理論だけでなく現場で役立つ教育法を学ぶことができました
②自社に適した手法の発見
経営者同士の経験共有は、自社の文化やニーズに合った人材育成の手法を発見できました。
異なる業界の取り組みは、新たな視点から考えるきっかけとなり、自社に最適な方法を選ぶ助けとなりました。
③持続可能な人間関係の構築
塾生同士のつながりは、長期的な関係性やビジネスネットワークを構築できます。
互いに情報交換を続けることで、新たなチャンスや問題解決のアイデアを得ることができました。
④経営者としての成長
他者の成功や失敗から学ぶことで、経営者自身が自分の価値観やリーダーシップスタイルを見直し、成長する機会を得ることができました。
染谷先生の指導を通じて、自己理解が深まった。自分の強みや弱みを明確にし、効果的なリーダーシップを発揮できるようになりました。
これらは塾生が塾アイウィルに参加することで感じていたことです。
染谷和巳先生と経営者である塾生の経験を通じて学ぶことは本当に有意義でした。人材育成の勘所を学び、経営者として成長。併せて組織全体の活性化を促進させた貴重な機会でした。
本当の理由は…
実は塾アイウィル設立の本当の目的はもうひとつあるのです。当時のアイウィルの営業力は、傍から見ていても弱かった。これだけ素晴らしい研修を商品にしているのに、売ろう広めようという気が感じられなかった。まあ染谷先生の「気に入ってくれた人が使ってくれればそれでいい」という考えがベースなのでしょうけど。
そこで営業的支援をしよう、となりました。
私たちは先ほど述べたように勉強になる。アイウィルさんもお客様が増えれば嬉しい。新たにアイウィルの研修を知ることができたお客様も、効果が大きいので喜ぶ。ひとつの「三方よし」ですね。
「十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年歴史になる」
歴史になった塾アイウィル、皆さんの協力で生まれ、助けてもらい活動してきました。
まずは一旦幕を下ろし、第二部へ。